子孫組小話-夏03



〔子孫組:夏の過ごし方B〕



笛や太鼓、人の賑わう声がそこかしこから聞こえてくる。

「へぇ、硝子細工か。綺麗だな」

「うん、良くできてる。一つ買おうかな」

遊士と陽菜の後ろでは幸弘と明良が別の露店を覗いている。

「明良、あれ買っても良いか?」

「んー、二つまでね」

そんな二組を眺める彰吾と元晴。

「たまには長曾我部に何か買ってやったらどうだ?」

「何故俺が。そういう片倉、お主こそ竜に簪の一本でも買ってやったらどうなんだ」

そう言って元晴は細めた瞳で、直ぐ側にある露店を指す。

「…分かった、こうしよう。俺が買ったらお前も買うんだぜ毛利」

「何故そうなる。それにアヤツに簪など…」

露店の前で立ち止まった彰吾と元晴の間に幸弘と明良がやって来る。

「む、お二人とも誰かに贈り物で?」

「簪…、女の子か。二人にそんな相手がいたとは俺の情報もまだまだだなぁ」

「そんな者おらぬ」

「あて推量でものを言うな猿飛」

綺麗に並んだ簪の内の一つを手に取り、元晴は冷ややかな視線を明良に向ける。彰吾もシャラリと細かい細工の施された藤色の簪を手に、口を開いた。

そこへかけられる声。

「おーい、置いてくぞ!」

「何やってんのよ四人とも!」

果たして二人は簪を買ったのか、…祭りは始まったばかりである。



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